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世界一の稜線


世界一の稜線の向こうが見たくてこの旅をはじめた。

たくさんの苦しみの一歩のすえ、その稜線に辿り着いた。その先にあったのは世界一巨大な神々しい影だった。



信じられないような美しい現象が目の前で起こっている。僕はこの景色が撮影したくてエベレストに登ってきたんだ。思わずバックからカメラを取り出した。しかしボタンを押してもシャッターが切れない。バッテリーを変えてもだめだ。僕の想定を超えた寒さと強風が吹いていた。完全に写真家としてやってはいけないミスを犯していた。


ならばとこの景色を目に焼き付けようとした。稜線には強風が吹き荒れ、ガラスのような雪が強風とともに目にを襲ってきた。僕の目は針を刺されたような痛みとともに半分くらいしか目を開くことができなくなった。無理やり開いてもモヤがかかったような、対象物をまともにみることができない。

世界で一番の何度も夢に描いた場所にいるというのに。写真を撮影することも、目に焼き付けることもままならない。


それでも僕は今、世界一の神々しい影と対峙し、人生最良の時を迎えている。写真にも目にも焼き付けることができない、ならば心に強く焼き付けよう。

これが経験したくて僕はここまで登ってきたのだから。

先ほど無事にベースキャンプに到着し、疲れた体に鞭を打って、心に焼き付けた絵を描いた。

僕には世界一の稜線の向こうはこう写ったんだ。



5月13日、皆さんのおかげで世界一の山、エベレストに登頂することができました。

写真家としては1番やってはいけない失敗をやらかし、何度も命を落としかねないミスをしました。それでも無事に帰ってくることができました。今は安堵の気持ちと、後悔と充実、経験したことがない疲労感、そして皆さまへの感謝で胸の中がいっぱいです。



これから少しずつこの旅について投稿していきたいと思います。

まずはエベレストの頂上から無事に帰ってこれたことをお伝えします。

ありがとうございました。



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